【使いこなされる力。/森野将彦】チームに欠かせない戦力となる方法【読書レビュー】

野球道具

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「ミスター3ラン」という愛称を持ち、黄金時代の中日ドラゴンズで常にスタメンに名前があるものの…ポジションは投手と捕手以外のどこかで打順も流動的なのに、毎年2桁本塁打を放つといった特異な便利屋として活躍した森野将彦さんが書いた本になります。

投手と野手の違いはあるものの…サイドスローの投手は、他の投げ方の投手と比べて便利屋のような使われ方をされやすいので、求められる活躍が日によって変わっても常に実力を発揮させる方法・思考法を学ぶために購入して読みました。

この本の概要

どこでも守れる稀代のユーティリティプレイヤーでありながら、単なる守備の名手にとどまらず、常にクリーンナップを任された無類の勝負強さ。プロ野球へ導いた星野仙一氏と開花させてくれた恩師・落合博満氏との初めて明かす秘話も交え、“使いこなされる力”とは何かを分析する。

ドラゴンズの黄金期を支えた名選手、初の書き下ろし。

著者略歴

森野 将彦

1978年生まれ、神奈川県横浜市出身。東海大相模高より、1996年のドラフト2位で中日ドラゴンズに入団。

プロ入り6年目の2002年シーズンから1軍に定着する。2008年に日本代表として北京オリンピックに出場。2009年からレギュラーの三塁手として活躍する。

2017年に現役引退。現在は野球解説者として活躍中。

読んでみて思ったこと

「チームでレギュラーになれない…」など出場機会に恵まれず、試合で本来の力を発揮できないといった選手には、とても有益な1冊。考え方がガラリと変わります。

もくじを見てみると、本の内容は第1~5章と5つに分けられて書かれていますが、実際に読んでみると、伝えたい内容は下記の2つに大別されていると感じました。

  • 第1~2章:長くチームに貢献するための思考法・準備の仕方
  • 第3~5章:プロ野球時代に仕えたそれぞれの監督との秘話

タイトルにもなっている「使いこなされる力」という内容に関しては、前半で8割以上書かれているので「本を読むのが苦手」という野球選手でも読んで内容を把握することは可能だと思います。

後半部分は、どちらも個性的で名将と言われる星野監督・落合監督との秘話が多数書かれているので、野球好きな人にはとても面白い内容となっています。

前半と後半で本の印象がガラリと変わる、とても珍しく面白い1冊でした。

Amazonに書かれたレビュー評価(他の人の感想)

私の感想だけでなく、他にもこの本を読んだ方の感想をAmazonのレビュー評価から抜粋してご紹介します。

落合政権を支えた主力選手であり、チャンスに回ると他球団ファンからすると本当に嫌な選手であると感じていた。
そして、本当に色んなポジションを守っていたのだなと(ショートもやっていたのか!)

プロ入り前のエピソードはプロ野球選手であればよくある内容かもしれないが、プロ入り後〜レギュラーを取るまで、晩年も含めて森野の気概、負けん気、努力が書かれた内容は、あの勝負強さ、守備のユーティリティさを改めて感じさせられた書籍であった。

印象に残ったのは落合監督からの地獄ノックの部分。意識が飛ぶほど猛練習の末、レギュラーを獲得。この地獄ノックを受けたのは森野以外に荒木、井端のみであったこと。
その後、落合地獄ノックを受けたものは誰もいないということ。
森野の死に物狂いの努力、練習はもちろんであるが、落合がこいつを引っ張り上げてやろうという気持ちにさせた点も大きい。

自身の圧倒的な練習、努力が運を呼び込み、それを見た監督(上司)がこいつ引っ張ってやろうとすること、運も味方にしてなりより最後は結果を出す。成功を収めた人の共通点だと考える。

Amazonカスタマーレビュー

プロ野球という、実力主義の世界で活躍することが、如何に難しいことか。本書を通して学ぶことができた。とくに、キャンプでの永遠と続くノック。才能のある人間が、努力することで起こる急成長を、文字を通して感じることができた。

Amazonカスタマーレビュー

拘りをどこに持つのか?というのが非常に重要という点を学べますね。
一つだけ気になったのは、ご本人の気質の問題なのでしょうが、
“自分で自分はわからない”
という事もあるのではないかと…
効果的とは自分では思えなくても、アメリカンノックに意味はあったと読んでいて感じました。
とはいえ、疑問をねじ伏せて前に進む男らしさと根性を知れて、非常にためになりました。
とてつもなくタフですね。文句なくプロ野球史上最強です。
森野さんがそう望めば、きっと落合さんを越えていたでしょう。
しかし、森野さんは勝負師としては、優しすぎました。
だからこそ越えてほしかったでしょうけど、それはイタチごっこですね。

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私のハイライト

最後に、個人的に特に印象に残った部分をいくつか抜粋します。

その当時、レギュラーが決まっていないポジションとは、ファーストとレフトだった。

「ライバルたちと比べて何かアドバンテージになることはないか」この当時、私は常にレギュラー獲得のため武器になるものはないかを考えていた。

私が狙っていたのは、ファーストやレフトだけではない。セカンドでもサードでもショートでも、可能性があれば出るつもりでいた。もし仮にレギュラーの誰かがけがをしてポジションが空いた時、キャンプでしっかりとアピールしておけば「代わりに森野を使ってみるか」と思ってもらえるかもしれないと考えていたのだ。少しでも可能性があるなら、アピールしておいて損はないだろう。

ミスに向き合うことは正直に言ってつらい作業だ。だがそこから逃げていては自身の成長を望むことはできないはずだ。ミスや問題が発生したら、放っておかずに二度と同じ過ちを繰り返さないよう、早めに対処することが大切だ。このことは野球に限らず、どんな世界でも通用することではないだろうか。

ユーティリティプレーヤーである私は、どこでも守れるからこそ空いているポジションにスッと入り込み、最終的にはポジションを奪うことができたのではないかと思っている。

私がチームの方針に耳を傾けようともせず、「サードしかできない」などとポジションに固執するようなタイプの選手であったら、恐らく4割バッターにでもならない限り、どの監督にも使ってもらえなかったに違いない。21年間もプロ野球選手を続けることはできなかっただろう。

ちまたでは、ユーティリティプレーヤーというと器用貧乏と捉えられ、便利屋として使われるというイメージがあるようだが、器用で悪いことはない。私はユーティリティプレーヤーだったからこそ道が開けたのだ。

希望とは違うポジションを任されたとしても、結果を出し続ければ、そこが適正なポジションになることだってある。そうなるにはまず、使える人間であることをアピールして、実際に使ってもらうことが大切だ。

例えば、一軍でレフトを守っている選手がバッティングの調子を落としているとしよう。「あの選手、調子が悪いから二軍に落とされるかも」とただ思っている選手と「選手の入れ替えがあるかもしれないから、いつ呼ばれてもいいようにレフトの練習をしておこう」と思う選手と、一軍の首脳陣はどちらを使いたいと考えるだろうか。

「私の働き場所はどこにあるか」という目で一軍の試合を見るようになった。「ここが手薄だ」と思うポジションがあればそのポジションの練習も積極的に行うようにした。

サードへの未練はもちろんあったが、優先すべきはチームの勝利。「私がレフトを守ることが、チームが勝つための最善策」だと自分に言い聞かすようになっていた。

この年はけがで離脱する選手が多かったのだが、けが人が出るたびに私がそのポジションを埋めるという状況になっていた。

とにかく与えられたポジションで、与えられた役割を果たすことが大切。それで結果が伴ったら、なお一層よいのではないだろうか。

「現状維持は退化の始まり」

スランプの時ほど、頭の中をシンプルにすることが大切。

私たち使われる側は、トップの考えを理解するように努め、先回りして動き、結果を出すことが求められているのではないだろうか。

望むと望まざるに関わらず、与えられたポジションを全力でまっとうし、そこでの経験を大きな財産として、別の場所でもその財産を活かしながら結果を出し続ける。そんな人物こそが本書で言う「使いこなされる力」を持った人物なのであろう。